生衛業の衛生問題

■ 生衛業の衛生問題


1 ノロウイルス等による感染性胃腸炎

(1)感染性胃腸炎とは

 感染性胃腸炎は病原性大腸菌やサルモネラなどの細菌、それにノロウイルスやロタウイルスなどのウイルスによって引き起こされる胃腸の疾患で、一年を通じて発症していますが、細菌によるものは夏場に集中し、ウイルスによるものは毎年秋から冬にかけて流行が認められます。
 症状は原因となる細菌やウイルスによって少しづつ異なりますが、発熱、下痢(水様便、血便など)、腹痛、悪心、嘔吐などです。これらの症状が単独又は、複数の症状が様々な組み合わせで出現しますが、原因となる病原体、患者個人間で大きな差があり、症状の重さも様々です。
 特に、冬場に発生するもののほとんどが「ノロウイルス」や「ロタウイルス」と呼ばれるウイルスによるものです。
 これらの病原体のほとんどが、食べ物や飲み水などを介した経口感染で体内に侵入します。

(2)ノロウイルスについて

 以前は小型球形ウイルス(Srsv)と呼ばれていました。感染力が強く、少量(50個~100個)でも発症するのが特徴です。
 乾燥に強く、アルコール、逆性石けんなどの殺菌剤が効きにくいので、十分な洗浄と加熱が必要です。

  [1] 感染経路
  ○  ウイルスに汚染された貝類(カキなどの2枚貝)を十分に加熱しないで食べた場合
  ○  ウイルスに感染した人が調理することによって汚染された食品を食べた場合
  ○  ウイルスに感染した人の便やおう吐物を触った手を口に入れた場合
  [2] 症状等
  ○  吐気、嘔吐、下痢が主症状であるが、腹痛、頭痛、発熱、悪寒、筋痛、咽頭痛を伴うこともある。
  ○  潜伏期間は、1~2日といわれており、乳児から成人まで幅広く感染する。
  ○  ウイルスは、症状が消失した後も3~7日間、長いときは1ヶ月程度、患者の便中に排出されるため、二次感染に注意が必要です。

(3)予防

  ○ 手洗い
 トイレの後、調理をする際、食事の前は必ずよく手を洗いましょう。 また、集団施設などでのタオルの共用は極力さけましょう。
  ○ 食材の加熱
 カキなどの2枚貝を食べる時は85℃以上で1分間以上中心部までよく加熱しましょう。
  ○ 調理器具類(まな板、包丁、ボール、ふきん等)の洗浄、消毒
 次亜塩素酸ナトリウム(ハイターなど)を200ppm溶液に5分間漬け込むか、同溶液をふきん等に浸して拭き、5分以上経過してから水道水で完全に洗い落とします。
 または85℃以上で1分以上の加熱をします。
  ○ 汚物の処理
   床上のおう吐物や便などは乾燥によるウイルスの浮遊を防ぐことが重要です。
 ペーパータオルで覆い、消毒液(1000ppm)をかけて10分以上放置した後、新品のビニール袋を反転し手を中に入れて包み込んで取ります。その後、床も消毒液で拭きましょう。
 マスク、ゴム手袋を着用して行いましょう。 手洗い、うがいを励行し、日常的に清潔を保つことが重要です。
 特に、排便後や調理前は流水でしっかりと手を洗いましょう。

※ 大分県ホームページ「ノロウイルス等による感染性胃腸炎にご注意!」(http://www.pref.oita.jp/site/bosaianzen/kansenseiichouen.html)から転載


2 食中毒

(1)食中毒の原因と症状

 食中毒を引き起こす主な原因は、「細菌」と「ウイルス」で、どちらも目には見えない小さなものです。細菌は温度や湿度などの条件がそろうと食物の中で増殖し、その食物を食べることにより食中毒を引き起こします。一方、ウイルスは自ら増殖しませんが、手や食べ物などを通じて体内に入ると、腸管内で増殖し、食中毒を引き起こします。
 症状としては、主に急性の胃腸炎(下痢、腹痛、おう吐など)を起こしますが、発熱や倦怠感など風邪のような症状を起こすこともあります。

(2)食中毒の分類

 [1]細菌性食中毒

 細菌が原因となるもので、毒素型と感染型のものがあります。
  毒素型‥細菌が食べ物の中で作り出す毒素が体内に入ることによっておこります。
        黄色ブドウ球菌、ボツリヌス菌、セレウス菌などが原因です。
  感染型‥細菌が体内に入り、腸の中で増えたり毒素を作ったりすることによっておこります。
        サルモネラ、腸炎ビブリオ、カンピロバクター、ウェルシュ菌、腸管出血性大腸菌などが原因です。

 [2]ウイルス性食中毒

 ウイルスが食品や飲料水を介して体内に入ることによっておこります。ノロウイルスなどが原因です。

 [3]原虫等による食中毒

 原虫などが食品や飲料水を介して体内に入ることによっておこります。原虫(クリプトスポリジウムなど)、真菌などが原因です。

 [4]化学性食中毒

 有毒・有害な化学物質が食品や飲料水を介して体内に入ることによっておこります。重金属(鉛、カドミウムなど)、農薬などが原因です。

 [5]自然毒食中毒

 植物や動物にもともと含まれる有害物質を摂取することによっておこります。
  植物性‥毒キノコ、ジャガイモの芽(ソラニン)などが原因です。
  動物性‥ふぐ毒(テトロドトキシン)、シガテラ毒、貝毒などが原因です。

(3)食中毒の3原則

 [1]つけない

 手にはさまざまな雑菌が付着しています。食中毒の原因菌が食べ物に付かないように、次のようなときは、必ず手を洗いましょう。

  ○  調理を始める前
  ○  生の肉や魚、卵などを取り扱う前後
  ○  調理の途中で、トイレに行ったり、鼻をかんだりした後
  ○  おむつを交換したり、動物に触れたりした後
  ○  食卓につく前
  ○  残った食品を扱う前

 また、生の肉や魚などを調理したまな板などの器具から、野菜などへ菌が付着しないように、使用の都度、きれいに洗いましょう。
 焼肉などの場合には、生の肉をつかむ箸と焼けた肉をつかむ箸は別のものにしましょう。
 食品の保管の際にも、他の食品に付いた細菌が食べ物に付着しないよう、食べ物は密封容器に入れたり、ラップをかけたりすることが大事です。

 [2]ふやさない

 食中毒を起こす微生物がついてしまった食品も、食品のなかで微生物が増えなければほとんどは食中毒にはなりません。
 細菌は通常、冷蔵庫の中ぐらいの低温(4℃~10℃)になると増えにくくなるので、食品を扱うときには室温で放置せずに冷蔵庫で保管することが大切です。
 ただし、冷やしたからといって菌が死ぬわけではありません。
 O157などのように少量でも発症する細菌やウイルスなども入るため、増えないからといって過信は禁物です。
 また、調理済みの食品はなるべく早く食べるようにしましょう。

 [3]やっつける

 ほとんどの細菌やウイルスは加熱によって死滅しますので、肉や魚はもちろん、野菜なども加熱して食べれば安全です。
 特に肉料理は中心までよく加熱することが大事です。目安は中心部の温度が75℃で1分以上加熱することです。
 ふきんやまな板、包丁などの調理器具にも、細菌やウイルスが付着します。
 特に肉や魚、卵などを使った後の調理器具は、洗剤でよく洗ってから、熱湯をかけて殺菌しましょう。

(4)食中毒を防ぐ6つのポイント

 [1]買い物
  ①  消費期限を確認する 
  ②  肉や魚などの生鮮食品や冷凍食品は最後に買う
  ③  肉や魚などは汁が他の食品に付かないように分けてビニール袋に入れる
  ④  寄り道をしないで、すぐに帰る
 [2]家庭での保存
  ①  冷蔵や冷凍の必要な食品は、持ち帰ったらすぐに冷蔵庫や冷凍庫に保管する
  ②  肉や魚はビニール袋や容器に入れ、他の食品に肉汁などがかからないようにする
  ③  肉、魚、卵などを取り扱うときは、取り扱う前と後に必ず手指を洗う
  ④  冷蔵庫は10℃以下、冷凍庫は-15℃以下に保つ
  ⑤  冷蔵庫や冷凍庫に詰めすぎない(詰めすぎると冷気の循環が悪くなる)
 [3]下準備
  ①  調理の前に石けんで丁寧に手を洗う
  ②  野菜などの食材を流水できれいに洗う
  ③  生肉や魚などの汁が、果物やサラダなど生で食べるものや調理の済んだものにかからないようにする
  ④  生肉や魚、卵を触ったら手を洗う
  ⑤  生肉や魚を切ったまな板や包丁は必ず洗って熱湯消毒する
  ⑥  包丁やまな板は肉用、魚用、野菜用と別々にそろえて使い分けると安全
  ⑦  ラップしてある野菜やカット野菜もよく洗う
  ⑧  冷凍食品の解凍は冷蔵庫の中や電子レンジで行う
  ⑨  冷凍食品は使う分だけ解凍し、冷凍や解凍を繰り返さない
  ⑩  ふきんやタオルは熱湯で煮沸した後しっかり乾燥させる
  ⑪  調理器具は洗った後、熱湯をかけて消毒する
 [4]調理
  ①  調理の前に手を洗う 
  ②  肉や魚は十分に加熱。中心部分の温度が75℃で1分間が目安 
 [5]食事
  ①  食べる前に石けんで手を洗う
  ②  清潔な食器を使う
  ③  作った料理は、長時間、室温に放置しない
  ④  温かいものは温かいうちに、冷たいものは冷たいうちに食べる
[6]残った食品
  ①  残った食品を扱う前にも手を洗う
  ②  清潔な容器に保存する
  ③  保存して時間が経ちすぎたものは思い切って捨てる
  ④  温め直すときは十分に加熱
  ⑤  ちょっとでもあやしいと思ったら食べずに捨てる

3 レジオネラ症

(1)レジオネラ症とは

 レジオネラ症は、レジオネラ属菌という細菌が原因で起こる感染症で、入浴施設で感染した例がたびたび報告されており、中には死亡例もあります。
症状のタイプは二種類あり、それぞれ、「レジオネラ肺炎」と「ポンティアック熱」と呼んでいます。「ポンティアック熱」は発熱や頭痛、筋肉痛などの症状で一般的に軽症ですが、「レジオネラ肺炎」のほうは、高熱や呼吸困難、吐き気、意識障害などが出て、急激に重症化し死亡することもあります。
幼児や高齢者、抵抗力の弱い人は感染しやすいので注意が必要です。人から人へ感染した事例は報告されていません。適切な予防策で、レジオネラ症の発生を防止しましょう。

(2)レジオネラ属菌について

 レジオネラ属菌は、自然界の土壌と淡水に生息する菌で、一般に20~50℃で増殖し36℃前後で最もよく増殖します。冷却塔水、循環式浴槽水などの人工環境水では、細菌を餌とするアメーバが多数生息していますが、レジオネラ属菌は特定の種類のアメーバに寄生し、その細胞内で増殖します。

(3)感染源と感染経路

 レジオネラ属菌を含む土壌の砂塵や浴場等でこれに汚染された細かい水滴(エアロゾル、直径1~5μm)を吸入することにより感染します。感染経路として、空調設備(屋上の冷却塔)や加湿器、入浴設備による感染例が報告されています。

(4)発生を防ぐには

 衛生管理が不十分な浴槽の壁面や配管などにつくヌメリは、生物膜(=バイオフィルム)と呼ばれ、栄養分が豊富です。循環式浴槽水や冷却塔、給湯設備などは、塩素などの消毒薬や紫外線から保護されるため、微生物の増殖に適した環境になりやすいのです。従って、バイオフィルムを発生させないこと、栄養源を絶って増殖させないこと、レジオネラ属菌が増殖している可能性があるエアロゾルを人に吸い込ませないこと、この3つがレジオネラ症を発生させない大原則になります。

  ○  こまめな清掃により、バイオフィルムが発生しないよう、また、発生してもすぐに除去する。浴槽だけでなく、配管、循環ろ過装置内にも気を配る。 
  ○  浴槽水の換水、消毒を徹底する。
  ○  循環水はレジオネラ属菌が増殖している可能性があるので、気泡発生装置、ジェット噴射装置、打たせ湯、シャワーなどには使用しない。


4 まつ毛エクステンションによる施術危害


(1)まつ毛エクステンションの危害について

 まつ毛1本ずつに接着剤で人工のまつ毛を付けるまつ毛エクステンションは、つけまつ毛よりも自然に仕上がるということで流行していますが、目の近くで接着剤などの化学物質を使用することから、安全性に十分な配慮がなされなければ、まぶたや目などに健康被害を招くおそれがあります。
 厚生労働省はまつ毛に関する施術を美容行為として位置づけていますが、まつ毛エクステンションは美容院だけではなく、エステ店やネイルサロンでも行われています。
 目もとというデリケートな部分に行うまつ毛への施術は、接着剤や器具の刺激、また施術者の技術によって危害が発生しやすく、細心の注意が必要です。

(2)消費者へのアドバイス

  ①  施術は目への危険が懸念されます。
   目及び目もとは皮膚が薄く粘膜と接していますが、その粘膜に接して生えているまつ毛に人工毛を瞬間接着剤等で接着する施術ですので、接着剤などの化学物質を目の近くで使うこと、異物を貼りつけること、目もとで細かな長時間の作業を行うことなど、目には危険や負担を伴う行為といえます。
  ②  異常を感じたら直ちに診察を受けましょう。
    医師の診断を受けても、症状だけでは原因がわからず、医師も単に原因不明の結膜炎やアレルギーとして投薬治療で終わることもあります。まつ毛エクステンションが原因と思われる場合は、施術をしたことをきちんと告げて診察してもらいましょう。 
  ③  施術で危害を受けたら情報提供しましょう。
 厚生労働省では、まつ毛の施術は美容師法上の美容であるとしています。施術によって危害を受けたり、美容師ではない人が施術をしていると思われたら、保健所等へ情報提供してください。

5 アタマジラミ

(1)アタマジラミとは

 髪の毛に寄生する昆虫で、髪の毛に卵を産み付けます。
 卵の色は少し透けた艶のある白色で、幼虫・成虫とも吸血、雄・雌とも吸血します。
 卵は、まとめて産むのではなく、1日に5~6個ずつ産み続け、約8日で孵化して幼虫となり、成虫の寿命は約30日です。
 温度や湿度にもよりますが吸血しないと2~3日で死にます。

(2)感染源及び感染経路

 髪から髪へ直接感染するするほか、物(帽子、マフラー、クシ、ブラシ、衣類等の共用、賃借り)を介して感染します。

(3)予防と駆除

 ブラシを使って洗髪、梳き櫛を使った駆除〔ベビーオイル、薬剤〕など頭髪の対策を行う。
 また、櫛、ブラシなど共用しやすいものは、熱風乾燥、60℃以上の湯に5分以上浸します。枕カバー、シーツは、アイロン、熱風乾燥します。

(4)理容師、美容師の対応

 ブラシ類、タオル類、ネックペーパなど頭髪を触る作業でうつることは、櫛、ブラシ類等はひとりごとに交換します。
 また、床の処置について、アタマジラミは這い上がることはないので、髪の毛は清掃することで処理が可能です。